//上付き &supsc{}; //下付き &subsc{}; // TeX &math2{}; どうもいまいち // &math(); // &mathjax(){}; // #mathjax() //図の挿入 //&imgr(./image/yamashitapic.jpg,nolink,10%); //1.¬e{keyword:Comment}; //2.¬e{:Comment}; //3.¬e{keyword:}; //4.¬e{keyword}; //5.¬e(Number_mode,Start_count); ¬e(bind,1); 当研究室では極低温における量子凝縮現象(量子スピン液体、超伝導、量子臨界現象など)を中心に研究しようとしています。 ここでは当研究室での研究テーマのうちいくつかを紹介していこうと思います。 ** 幾何学的フラストレーション下における量子スピン液体の研究 [#j4d24120] 二次元の三角格子の上に反強磁性スピンを並べるとどうなるか? 一見すごく簡単そうに聞こえるこの質問ですが、実は凝縮物理学における長年の問題の一つです。その原因は三角格子における幾何学的フラストレーションにあります。 幾何学的フラストレーションの効果は下の図にあるように、反強磁性イジングスピンを考えると一番わかりやすいです。 下図(a)のように四角格子ならば何の問題もなく反強磁性スピンを並べることができますが、三角格子(b)やカゴメ格子(c)の場合にはそうはいきません。 実際、イジングスピンの場合には三角形のいづれかの辺が反対向きになれない組み合わせが無数に存在して、絶対零度まで秩序しないことが理論的に知られています。 |LEFT:|LEFT:200|c |&imgr(./image/2D_geometries_1.png,nolink,40%,around);|幾何学的フラストレーション。四角格子(a)においては反対向きのスピンが秩序よく並ぶことができるが、三角格子(b)やカゴメ格子(c)では両隣のスピンと反対向きになれないスピンが存在する。| これを量子力学的ハイゼンベルグスピンにあてはめ、絶対零度まで秩序化しない量子スピン液体が存在すると指摘したのがP.W. Andersonです。下の図の色で塗った部分で示すように、各サイトのスピンはシングレットスピン &math(\left| \uparrow\downarrow \right\rangle - \left| \downarrow\uparrow \right\rangle);を形成して、複数の空間的にランダムなパターンが量子力学的に重なりあうことで秩序状態よりもエネルギーが下がることを指摘しました。この状態は''Resonating-valence-bond (RVB) state''と呼ばれ、高温超伝導のメカニズムの候補としても有名です。 ¬e{RVB:P.W. Anderson (1973) Mater. Rev. Bull. 8 153.}; このように、量子揺らぎによって絶対零度まで秩序化しないスピン状態は''量子スピン液体状態(Quantum spin liquids)'' ¬e{QSL:Leon Balents (2010) Spin liquid in frustrated magnets, Nature 464, 199-208.:量子スピン液体を勉強を始めるのに最適なレビューです。}; と呼ばれ、AndersonのRVB状態もQSLの一つです。 ただ、二次元三角格子におけるハイゼンベルグ模型の場合には120度構造と呼ばれる長距離秩序が実現することがその後の理論計算によって示されています。しかし、より揺らぎの強いMott転移近傍やカゴメ格子の場合に量子スピン液体状態が実現する可能性が理論的に指摘されています。 |LEFT:|LEFT:200|c |&imgr(./image/RVB.jpg,nolink,100%);|RVB状態の模式図。黄色の楕円で結ばれたペアがシングレット対を作り、様々な組み合わせが量子力学的に重なりあっている。| こうした二次元における量子スピン液体の研究は長らく理論的なものだけだったのですが、近年の物質開発の進展によって実験的に到達可能な低温まで磁気秩序が見つからない物質群が見つかってきています。 これらの物質ではスピン相互作用の大きさよりも十分低温まで冷やしても磁気秩序が観測されていません。これは通常の磁性体がスピン相互作用の大きさ程度の温度で磁気秩序を示すのとは大きく異なり、幾何学的フラストレーションの効果などによって磁気秩序が抑えられていると考えられています。 |LEFT:|LEFT:200|c |&imgr(./image/CandidateMaterials.png,nolink,60%,left,around);|量子スピン液体の候補物質の例:(a)グラファイト上に吸着されたヘリウム3。¬e{Masutomi:R.Masutomi, Y. Karaki, H.Ishimoto (2004) Phys. Rev. Lett. 92,025301.};(b)二次元三角格子を持つ有機物EtMe&subsc{3};Sb[Pd(dmit)&subsc{2};]&subsc{2};。¬e{Kato:K. Kanoda and R. Kato (2011) Annu. Rev. Condens. Matter Phys. 2 167.};(c)カゴメ鉱石Herbertsmithite¬e{:Freedman (2010) JACS 132, 16185-16190.};| しかし、「磁気秩序が無い」などの「・・・が無い」という情報では量子スピン液体を解明することはできません。そこには量子力学的効果による特徴な何かがあるはずです。これを熱伝導率、磁気トルクなどによって解明しようとしています。スピン相互作用の大きさよりも十分低温でなければいけませんから、当然極低温までの測定が必要で、特に我々の研究室ではまだだれも測定していない温度領域まで測定をしたいと考えています。また、幾何学的フラストレーション下の量子スピンにとどまらず、軌道揺らぎや価数揺らぎといった様々な種類の量子揺らぎの研究をしていきたいと考えています。 &imgr(./image/ISS_web_figures_2.png,nolink,40%); 最近の実験結果:(a)EtMe&subsc{3};Sb[Pd(dmit)&subsc{2};]&subsc{2};の熱伝導率の測定から絶対零度極限で&mathjax{\kappa/T};の残留が見つかった。これはギャップレスの励起が存在することを示している。 ¬e{:M. Yamashita et al. (2010) [[Science 328, 1246-1248.:http://dx.doi.org/10.1126/science.1188200]]}; (b)磁気トルク測定からはこのギャップレス励起が磁気的なものであることが見いだされ、重水素置換に対する安定性からEtMe&subsc{3};Sb[Pd(dmit)&subsc{2};]&subsc{2};には量子臨界相が存在することが示唆された。 ¬e{:D.Watanabe et al. (2012) [[Nature comm 3, 1090.:http://dx.doi.org/10.1038/ncomms2082]]}; ** [#m1c68314]