//上付き  &supsc{};
//下付き  &subsc{};

// TeX  &math2{}; どれもいまいち
//        &math();  
//        &mathjax(){};     <= &mathjax(){\nu}; とすればよい。()はcss style
//        #mathjax()

// ギリシャ文字  https://rakko.tools/tools/89/ で調べる
// &#0949; &epsilon;
// &#0937; &Omega;
// &#954; or &kappa;

//図の挿入
//&imgr(./image/yamashitapic.jpg,nolink,10%);

//1.&note{keyword:Comment};
//2.&note{:Comment};
//3.&note{keyword:};
//4.&note{keyword};
//5.&note(Number_mode,Start_count);

//  章立ては **
//  Subsection を ***
//  さらに細かいリストは -
//

&note(bind,1);

当研究室では絶対零度近傍における量子凝縮現象(量子スピン液体、超伝導、量子臨界現象など)を中心に研究しようとしています。新しい低温技術・測定技術の開発によって未知の新奇現象の探索をしていこうというのが基本方針です。ここでは現在行っている研究の一部を紹介します。

#contents

** 超低温領域における強相関電子系研究 [#qc60b22f]
新しい土地を訪れると新しい発見があるように、だれも到達したことのない超低温にはまだ見ぬ新奇現象が隠れている可能性があります。市販の装置で容易に実現できるようになった希釈冷凍機温度(〜20mK)よりも下の温度は、ヘリウム以外の物性研究にとってほとんど未踏の温度領域です。我々は特に、重い電子系物質と呼ばれるf電子化合物の超低温物性を研究しようとしています。強相関電子系の中でも、f電子をもつ希土類元素を含む化合物は、f電子が遍歴性と局在性を併せ持ち、多自由度が共存・競合しているという特徴があります。この結果、系の有効的なエネルギースケールが小さくなり低温で他の物質にない特徴的な電子状態が現れます。いままでに異方的超伝導ギャップを持つ超伝導体や多極子秩序状態、非フェルミ液体に代表される量子臨界状態などの様々な状態が見つかっています。一方、小さいエネルギースケールのために、これらの量子状態が現れる温度領域も低く、これまでの希釈冷凍機温度までの研究では発見されていなかった電子状態が隠れている可能性が十分あります。 このような超低温度領域に興味深い物性がありそうな物質群を中心に、物性研の超低温冷凍機とそこでの超低温研究の経験を生かして、強相関電子系における超低温物性測定と技術開発を進めています。現在、

-[[Ce化合物の超低温量子振動測定・NMR測定]] [1,2]
-超低温度までの熱膨張率・磁歪測定
-Yb化合物の超低温電気抵抗測定
-ポメンランチューク法を用いた超低温冷凍機開発
などを中心に研究を進めています。



CENTER:&imgr(./image/ULT_WEB_figures.png,nolink,30%);
//CENTER:&imgr(./image/NewBig_all.jpg,nolink,30%);
//CENTER:超低温装置の写真。左:装置の低温部分。中央:核ステージ下の実験部分。右:超低温磁気トルク測定装置。

+''Anomalous Change in the de Haas-van Alphen Oscillations of CeCoIn&subsc{5}; at Ultralow Temperatures''~
Hiroaki Shishido, Shogo Yamada, Kaori Sugii, Masaaki Shimozawa, Youichi Yanase, Minoru Yamashita~
'''Phys. Rev. Lett.''' ''120'', 177201 (2018). [[doi:10.1103/PhysRevLett.120.177201:+https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.120.177201]]~
+''Ultralow temperature NMR of CeCoIn&subsc{5};''~
M. Yamashita, M. Tashiro, K. Saiki, S. Yamada, M. Akazawa, M. Shimozawa, T. Taniguchi, H. Takeda, M. Takigawa, H. Shishido~
'''Phys. Rev. B''' ''102'', 165154 (2020).
[[doi:10.1103/PhysRevB.102.165154:+https://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRevB.102.165154]]

&br;
&br;

** 非荷電励起における熱ホール効果 [#rde9c4e9]
金属中を流れる電子に磁場を印可すると、フレミング左手の法則で表されるローレンツ力によってその軌道が曲げられ、電流の向きと磁場の向きの両方に直行する方向に起電力が現れます。ホール効果として知られるこの現象は、金属中の電子に対する基礎物性測定から、スマートフォンの中の磁気センサまで、様々に応用されている現象です。一方、電子と違って格子振動によるフォノンやスピン励起によるマグノン、スピノンといった素励起は電荷をもたないので、磁場をかけてもローレンツ力によるホール効果は現れません。ところが、最近、磁性体中のスピンの集団励起であるマグノンやスピノン、果てはフォノンまでがホール効果を示す可能性がある事がわかりました。こうした非荷電励起は電気を運びませんが熱を運ぶため、このホール効果は熱流と磁場の両方向に対して垂直方向の温度差として現れる「熱ホール効果」として観測されます。
ではどうして、磁場を感じない非荷電励起による熱流が磁場で曲がって熱ホール効果を示すのでしょうか?まだその詳細は解明されていませんが、スピン励起などの電荷中性励起もベリー位相などの量子効果を受けることで有効的な磁場を感じる可能性が考えられています。我々はこの新しい熱ホール効果を精密に測定する事で、スピン励起やフォノン励起に対する熱ホール効果を明らかにする研究を行っています。

これまでに以下のような物質に対する、熱ホール測定による研究を行ってきました。
-[[カゴメ格子物質ボルボサイト、カペラサイトにおける熱ホール効果]][1-4]
-非磁性絶縁体におけるフォノン熱ホール効果 [5]
-キタエフ磁性体における熱ホール効果 [6,7]
-磁気スカーミオンによるトポロジカル熱ホール効果[8]
&br;
&br;

CENTER:&imgr(./image/THE_WEB_figures_1.png,nolink,15%);
CENTER:(左)金属中を流れる電子が磁場を感じるとローレンツ力によって軌道が曲がる。こうした「通常ホール効果」に加えて、ベリー位相の効果などによる「異常ホール効果」によってもホール効果が現れる。(右)絶縁体中の熱流は電荷をもたないから磁場による「通常ホール効果」は起きないが、ベリー位相による「異常ホール効果」に対応する熱ホール効果が現れる可能性がある。

//CENTER:&imgr(./image/LiF base pic2.jpg,nolink,15%);
//CENTER:熱ホール測定装置の写真。金属によるホール効果の影響を避けるためにLiF単結晶が試料ベースとして使われています。

&br;

+''Emergence of nontrivial magnetic excitations in a spin-liquid state of kagom&eacute; volborthite''~
Daiki Watanabe, Kaori Sugii, Masaaki Shimozawa, Yoshitaka Suzuki, Takeshi Yajima, Hajime Ishikawa, Zenji Hiroi, Takasada Shibauchi, Yuji Matsuda, and Minoru Yamashita~
'''Proc. Natl. Acad. Sci. USA''' ''113'', 8653-8657 (2016); 
DOI: [[10.1073/pnas.1524076113:+http://www.pnas.org/content/113/31/8653.abstract]].~
+''Spin Thermal Hall Conductivity of a Kagom&eacute; Antiferromagnet''~
Hayato Doki, Masatoshi Akazawa, Hyun-Yong Lee, Jung Hoon Han, Kaori Sugii, Masaaki Shimozawa, Naoki Kawashima, Migaku Oda, Hiroyuki Yoshida, and Minoru Yamashita~
'''Phys. Rev. Lett.''' ''121'', 097203 (2018).
[[doi:10.1103/PhysRevLett.121.097203:+https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.121.097203]] &br;
+''Thermal-transport studies of kagom&eacute; antiferromagnets''~
Minoru Yamashita, Masatoshi Akazawa, Masaaki Shimozawa, Takasada Shibauchi, Yuji Matsuda, Hajime Ishikawa, Takeshi Yajima, Zenji Hiroi, Migaku Oda, Hiroyuki Yoshida, Hyun-Yong Lee, Jung Hoon Han and Naoki Kawashima~
'''J. Phys.: Condens. Matter''' ''32'' 074001 (2020).
[[doi:10.1088/1361-648X/ab50e9:+https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-648X/ab50e9]]&br;
+''Thermal Hall Effects of Spins and Phonons in Kagome Antiferromagnet Cd-Kapellasite''~
Masatoshi Akazawa, Masaaki Shimozawa, Shunichiro Kittaka, Toshiro Sakakibara, Ryutaro Okuma, Zenji Hiroi, Hyun-Yong Lee, Naoki Kawashima, Jung Hoon Han, Minoru Yamashita~
'''Phys. Rev. X''' ''10'', 041059 (2020).[[DOI:10.1103/PhysRevX.10.041059:+https://journals.aps.org/prx/abstract/10.1103/PhysRevX.10.041059]]&br;
+''Thermal Hall Effect in a Phonon-Glass Ba&subsc{3};CuSb&subsc{2};O&subsc{9};''~
K. Sugii, M. Shimozawa, D. Watanabe, Y. Suzuki, M. Halim, M. Kimata, Y. Matsumoto, S. Nakatsuji, and M. Yamashita~
'''Phys. Rev. Lett.''' ''118'', 145902 (2017).
DOI:[[https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.118.145902:+https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.118.145902]]
+''Unusual thermal Hall effect in a Kitaev spin liquid candidate &math(\alpha);-RuCl&subsc{3};''~
Y. Kasahara, K. Sugii, T. Ohnishi, M. Shimozawa, M. Yamashita, N. Kurita, H. Tanaka, J. Nasu, Y. Motome, T. Shibauchi, Y. Matsuda~
'''Phys. Rev. Lett.''' ''120'', 217205 (2018).[[doi:10.1103/PhysRevLett.120.217205:+https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.120.217205]]
+''Sample dependence of the half-integer quantized thermal Hall effect in a Kitaev candidate &math(\alpha);-RuCl&subsc{3};''~
M. Yamashita, J. Gouchi, Y. Uwatoko, N. Kurita, H. Tanaka~
'''Phys. Rev. B''' ''102'', 220404(R) (2020).
[[doi:10.1103/PhysRevB.102.220404:+https://journals.aps.org/prb/abstract/10.1103/PhysRevB.102.220404]]~
+''Topological Thermal Hall Effect Induced by Magnetic Skyrmions''~
Masatoshi Akazawa, Hyun-Yong Lee, Hikaru Takeda, Yuri Fujima, Yusuke Tokunaga, Taka-hisa Arima, Jung Hoon Han, Minoru Yamashita~
[[arXiv:2102.06430:+https://arxiv.org/abs/2102.06430]]

&br;
&br;
** NMR測定によるスピンや多極子の非自明な秩序の探求 [#z4f1f4e0]

強相関電子系や強い量子効果の現われる磁性体を対象とする物性研究では、基底状態(秩序状態)の素性を明らかにすることが重要な課題の一つです。この課題を解決する有効な手段の一つとして核磁気共鳴(NMR)測定が挙げられます。NMRとは、原子核スピンが磁場中で起こす共鳴現象のことです[Fig. 1]。我々はこの現象を利用して、物質の内部に生じる磁場や電場勾配の分布を調べています。物質中に現れるこれらの分布は、電子やスピン、さらには、多極子と呼ばれる電荷や磁荷の異方的な分布の整列状況を反映するため、NMR測定によって得られる情報が、基底状態の解明に重要な役割を担います。

|LEFT:|LEFT:280|c
|&imgr(./image/nmr_fig1.png,nolink,50%);|Fig. 1 核磁気共鳴(NMR)現象の模式図。着目する原子(赤丸)の核スピンのエネルギーは、局所磁場(外部磁場と内部磁場の和)に応じてゼーマン分裂を起こす。この分裂幅と等しいエネルギーの電磁波を加えることで共鳴現象が発生する。共鳴線は内部磁場の方向や大きさに応じてシフトする。このシフト量を解析することで局所帯磁率やスピン、多極子の整列状況を考察する。|

NMR測定によって物質中に発生する内部磁場や電場勾配の情報を最大限に引き出すためには、
-物質に印加する外部磁場の方位が精度良く制御された実験を行うこと
-着目する原子核が持つ局所対称性を良く理解していること

が重要です。これらを達成するために、我々は二軸の試料回転機構[Fig. 2 (a)]を利用した角度制御NMR測定を行い、結晶の対称性を考慮してNMR shift (局所帯磁率)テンソルや電場勾配テンソルの解析を行っています。また、高圧技術[1]を利用して、高圧下NMR測定にも取り組んでいます[Fig. 2(b)]。最近、興味を持って取り組んでいる研究として
-圧力により引き起こされる磁気相転移[2]
-5d遷移金属を含む酸化物に現れる多極子秩序

の研究が挙げられます。

|LEFT:|LEFT:280|c
|&imgr(./image/nmr_fig2.png,nolink,40%);|Fig.2 (a) 二軸の試料回転機構。試料への磁場印加方位を自由に制御できる。(b) 東大 北川博士らによって開発された対向アンビル圧力セル[1]。圧力セル用の回転機構を組み合わせることで高圧環境下においても試料への磁場印加方位を精密に制御可能。|

ここでは、圧力下において行なった研究:圧力により引き起こされる磁気相転移について簡単に紹介します。

磁気フラストレーションが現われる系の一つに、最近接格子間の相互作用J&subsc{1};と次近接格子間の相互作用J&subsc{2};が競合するスピン系があります。その典型例が正方格子スピン系です。この系では、辺方向にJ&subsc{1};、 対角線方向にJ&subsc{2};の交換相互作用が働き、反強磁性的なJ&subsc{1};がJ&subsc{2};に比べて十分に強い場合にはチェッカーボード状に反強磁性スピンが配列し、J&subsc{2};が強い場合にはストライプ状にスピンが配列します。J&subsc{1};とJ&subsc{2};を軸としてこの系の基底状態の相図を描いたものが、Fig. 3の内挿図になります。この相図上で興味深いのは磁気秩序相の狭間です。例えば、二種類の反強磁性相の狭間にはいずれの反強磁性とも異なる量子スピン液体相が出現する可能性が提案されており、この相を探索する実験研究が精力的に行なわれています。

我々は、RbMoOPO&subsc{4};Clという物質において、圧力を印加することで二種類の反強磁性相が入れ替わることを発見しました[2]。常圧下でストライプ状の磁気配列(CAF)を示す本物質は、高圧下においてチェッカーボード状の磁気秩序(NAF)を起こします。Fig. 3には、磁気相の入れ替わりを反映する&supsc{31};P核NMRスペクトルの圧力依存性が示されています。この現象は圧力によってJ&subsc{2};とJ&subsc{1};の比が制御されることを示唆しており、Fig. 3 の内挿図に示されるように相を横断することに成功したものと考えられます。今後、圧力により誘起されるこの相転移(入れ替わり)の詳細や相境界の磁性をより詳しく調べることで、正方格子スピン系の量子スピン液体相に関する研究が進展することが期待されます。このように、高圧下という実験手段に制約の課された環境下であってもNMR測定は基底状態の解明に威力を発揮します。

|LEFT:|LEFT:250|c
|&imgr(./image/nmr_fig3.png,nolink,25%);|Fig. 3 フラストレート正方格子スピン系RbMoOPO&subsc{4};Clの&supsc{31};P核NMRスペクトルの圧力依存性。内挿図は、二種類の交換相互作用J&subsc{1};とJ&subsc{2};を軸とする模式的な相図。RbMoOPO&subsc{4};Clは常圧下でストライプ状の反強磁性秩序(CAF)を起こすが、圧力下ではチェッカーボード状の秩序(NAF)を起こすことが示された。|

[参考文献]
+K. Kitagawa, H. Gotou, T. Yagi, A. Yamada, T. Matsumoto, Y. Uwatoko, and M. Takigawa~
'''J. Phys. Soc. Jpn.''' ''79'', 024001 (2010).
+H. Takeda, T. Yamauchi, M. Takigawa, H. Ishikawa, and Z. Hiroi~
'''Phys. Rev. B''' ''103'', 104406 (2021).


&br;
&br;

** 幾何学的フラストレーション下における量子スピン液体の研究 [#j4d24120]

二次元の三角格子の上に反強磁性スピンを並べるとどうなるか?

一見すごく簡単そうに聞こえるこの質問ですが、実は凝縮物理学における長年の問題の一つです。その原因は三角格子における幾何学的フラストレーションにあります。
幾何学的フラストレーションの効果は下の図にあるように、反強磁性イジングスピンを考えると一番わかりやすいです。
下図(a)のように四角格子ならば何の問題もなく反強磁性スピンを並べることができますが、三角格子(b)やカゴメ格子(c)の場合にはそうはいきません。
実際、イジングスピンの場合には三角形のいづれかの辺が反対向きになれない組み合わせが無数に存在して、絶対零度まで秩序しないことが理論的に知られています。

|LEFT:|LEFT:200|c
|&imgr(./image/2D_geometries_1.png,nolink,40%,around);|幾何学的フラストレーション。四角格子(a)においては反対向きのスピンが秩序よく並ぶことができるが、三角格子(b)やカゴメ格子(c)では両隣のスピンと反対向きになれないスピンが存在する。|

これを量子力学的ハイゼンベルグスピンにあてはめ、絶対零度まで秩序化しない量子スピン液体が存在すると指摘したのがP.W. Andersonです。下の図の色で塗った部分で示すように、各サイトのスピンはシングレットスピン &math(\left| \uparrow\downarrow \right\rangle - \left| \downarrow\uparrow \right\rangle);を形成して、複数の空間的にランダムなパターンが量子力学的に重なりあうことで秩序状態よりもエネルギーが下がることを指摘しました。この状態は''Resonating-valence-bond (RVB) state''と呼ばれ、高温超伝導のメカニズムの候補としても有名です。
&note{RVB:P.W. Anderson (1973) Mater. Rev. Bull. 8 153.};
このように、量子揺らぎによって絶対零度まで秩序化しないスピン状態は''量子スピン液体状態(Quantum spin liquids)''
&note{QSL:Leon Balents (2010) Spin liquid in frustrated magnets, Nature 464, 199-208.:量子スピン液体を勉強を始めるのに最適なレビューです。};
と呼ばれ、AndersonのRVB状態もQSLの一つです。
ただ、二次元三角格子におけるハイゼンベルグ模型の場合には120度構造と呼ばれる長距離秩序が実現することがその後の理論計算によって示されています。しかし、より揺らぎの強いMott転移近傍やカゴメ格子の場合に量子スピン液体状態が実現する可能性が理論的に指摘されています。

|LEFT:|LEFT:200|c
|&imgr(./image/RVB.jpg,nolink,100%);|RVB状態の模式図。黄色の楕円で結ばれたペアがシングレット対を作り、様々な組み合わせが量子力学的に重なりあっている。|

こうした二次元における量子スピン液体の研究は長らく理論的なものだけだったのですが、近年の物質開発の進展によって実験的に到達可能な低温まで磁気秩序が見つからない物質群が見つかってきています。
これらの物質ではスピン相互作用の大きさよりも十分低温まで冷やしても磁気秩序が観測されていません。これは通常の磁性体がスピン相互作用の大きさ程度の温度で磁気秩序を示すのとは大きく異なり、幾何学的フラストレーションの効果などによって磁気秩序が抑えられていると考えられています。

|LEFT:|LEFT:200|c
|&imgr(./image/CandidateMaterials.png,nolink,60%,left,around);|量子スピン液体の候補物質の例:(a)グラファイト上に吸着されたヘリウム3。&note{Masutomi:R.Masutomi, Y. Karaki, H.Ishimoto (2004) Phys. Rev. Lett. 92,025301.};(b)二次元三角格子を持つ有機物EtMe&subsc{3};Sb[Pd(dmit)&subsc{2};]&subsc{2};。&note{Kato:K. Kanoda and R. Kato (2011) Annu. Rev. Condens. Matter Phys. 2 167.};(c)カゴメ鉱石Herbertsmithite&note{:Freedman (2010) JACS 132, 16185-16190.};|


このような量子スピン液体状態を安定化させる量子揺らぎを増大させる方法としてこれまでに、…禺仝気寮こΔ縫好團鵑鯤弔弦める、幾何学的フラストレーションでスピン配列を不安定化させるという2種類の手法は広く認知されていました。しかし最近では、スピン以外の自由度(電荷、軌道など)によって量子揺らぎを増大させて、量子スピン液体状態が実現しているのではないかと考えられている物質がいくつか発見されてきています。我々の研究室では、希釈冷凍機温度(~ 20 mK)の温度領域まで熱輸送測定を行うことで、このような新しい量子スピン液体状態を調べようと取り組んでいます。具体的には、

-プロトン揺らぎによる量子スピン液体候補物質κ-H&subsc{3};(Cat-EDT-TTF)&subsc{2};
-軌道揺らぎによる量子スピン液体候補物質Ba&subsc{3};CuSb&subsc{2};O&subsc{9};

の2つの物質の研究を中心に行っています。

特に、「磁気秩序が無い」などの「・・・が無い」という情報では量子スピン液体を解明することはできません。そこには量子力学的効果による特徴な何かがあるはずです。これを熱伝導率、磁気トルクなどによって解明しようとしています。スピン相互作用の大きさよりも十分低温でなければいけませんから、当然極低温までの測定が必要で、特に我々の研究室ではまだだれも測定していない温度領域まで測定をしたいと考えています。

&imgr(./image/ISS_web_figures_2.png,nolink,40%);

最近の実験結果:(a)EtMe&subsc{3};Sb[Pd(dmit)&subsc{2};]&subsc{2};の熱伝導率の測定から絶対零度極限で&mathjax{\kappa/T};の残留が見つかった。これはギャップレスの励起が存在することを示している。
&note{:M. Yamashita et al. (2010) [[Science 328, 1246-1248.:http://dx.doi.org/10.1126/science.1188200]]};
(b)磁気トルク測定からはこのギャップレス励起が磁気的なものであることが見いだされ、重水素置換に対する安定性からEtMe&subsc{3};Sb[Pd(dmit)&subsc{2};]&subsc{2};には量子臨界相が存在することが示唆された。
&note{:D.Watanabe et al. (2012) [[Nature comm 3, 1090.:http://dx.doi.org/10.1038/ncomms2082]]};





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